お世話になります。
ううしまああです。
フィンランド在留歴、はや数ヶ月。
私の心の中で、とある欲望がむくむくと成長し、私を支配しようとしていた。
「フィヨルドが見たい!!」
皆さんは、社会の授業でフィヨルドを習ったことを覚えているだろうか。
『グレートギャツビー』でお馴染みのフィッツジェラルドを縮めたような名前だな、と覚えた方が私以外にいるかどうかは定かではないが、フィヨルドという名称が、記憶の片隅にはあったり、なかったりする方も多いのではないだろうか。
私も、リアス式海岸と並んで暗記したという記憶がある。しかし、あの「リアス式海岸」ほど地理系の問題以外で使わない言葉があるだろうか。
考えてみてほしい。
「聞いて。俺、三陸出身なんだけどさ。俺ん家、ちょうどリアス式海岸のど真ん中! すごくね??」
「まじか。超リアスっ子じゃん。リアス式憧れるわ〜」
なんて会話が繰り広げられるのが想像できようか。
うん。むり。
その点、フィヨルドはそれなりに海外旅行が好きな人たちなら日常会話で使う。
「私、この間、ノルウェー行ってさ。フィヨルド見てきた。めっちゃ綺麗!」
「まじか。フィヨルド憧れるわ〜」
な。この格差よ。
なんだか悲しい気持ちになった。
だがまあ、それは置いておこう。
大変遺憾ながら、今回はリアス式海岸は本題ではないのだ。
フィヨルドFjordである。
親から奪取した『地球の歩き方'11~'12』によると、
フィヨルドとは、ノルウェー語で「内陸部へ深く入り込んだ湾」を意味する。氷河による侵食で作られたU字、V字型の谷(氷食谷)に海水が侵入して形成された入江のことで、峡湾とも呼ばれる。両岸を急な高い谷壁に挟まれ、細長く直線的に延びていることが多い。
とある。
端的に言うと、リアス式海岸よりキャッチーでカッコいい地形のことである。
しかし、この「キャッチーでカッコいい地形」は日本ではみられないのだ。
日本でも、アスファルトが氷に侵食されるさまであれば、見たことがある人もいるだろう。
雪が融けて地面が顔を出す、春の北海道でも遭遇する光景である。そして、この割れたアルファルトを修繕するために、土建屋が意気揚々と各地の道路に出現する。これが俗にいう(?)エターナル公共事業受注システムである。風が吹けば桶屋が儲かるし、雪が降れば土建屋が儲かる。私が土建屋なら、雪がアスファルトを穿つ度に、東京帝国大学が考案した由緒正しき奉賀の言葉である、万歳三唱を唱えることは間違いない。春になる度に、良いシステムだと感心しきりである。
また脱線してしまった。フィヨルドの話に戻ろう。
つまり、想像するに、フィヨルドとは、アスファルト侵食の超超拡大版である。なのに、その姿を想像することすらできない。
ならば見に行くしかなかろう。
念の為お伝えしておくと、残念ながらフィンランドにフィヨルドは存在しない。フィンランドは湖や沼ばかりの水浸しの国だが、山と言えるような山がない。ほぼぺったんこである。水があっても、ぺったんこだとフィヨルドという地形は形成されないのである。フィヨルドと呼ばれるには、ボンボボンとした起伏のある地形が必要なのだ。
ノルウェーは、自転車を漕ぐのが死ぬほど大変なくらい、山だらけ。フィヨルドっ気に満ちた国である。
ちなみに、ノルウェーと言えば、日本の隣の隣の国なので、我々のご近所さんと言っても差し支えのない国だろう。ノルウェーは国家運営がとても上手な国らしく、北海油田でガッポガッポと儲けた結果、ロバート・レッドフォードもとい、あのジェイ・ギャツビーも真っ青な強気な料金設定を行うことで有名である。スイスに並び、外国人旅行者の財布を痛ぶることにかけては1、2を争う凶悪国家である。
つまり、学生にとっては天敵の国と言える。
もちろん、学生だって、対抗手段は色々持っている。が、結局安価な情報をいかに仕入れるかに落ち着く。
親の脛を骨の髄までしゃぶる凶悪さにかけては、大学生の右に出るものなどいない。が、脛の数というものは限られているものである。そして、あまりしゃぶると、首根っこを引っ掴まれて、脛から取り外されてお終いである。脛をしゃぶらせる選択権はあくまで親側にあるのだ。そして、学生が目指すのは持続可能で超サステナブルな脛かじりである。なので、学生は脛に頼り過ぎない、安価な手段を模索するわけである。
今回の旅の目的地はベルゲンに設定した。
どうせ見るなら、フィヨルド界の覇者、ソグネフィヨルドを見たいではないか。ソグネフィヨルドは、世界遺産の町、ベルゲンの近くにあるフィヨルドだ。ネットでパッパラパーと調べて、じゃあそこに行こうと決めた。
次は、行き方だ。当時はこの移動手段をいかに安く済ますかで、無い脳みそをスカスカになるまで絞ったものである。
- 徒歩
多くの人がまず思いつくのは、徒歩だろう。太古の昔より、人間は歩くことで旅をしてきた。江戸時代の日本人がお伊勢参りに行くときに、東海道を歩いた速度は30km/日くらいと言われる。google先生によると、VaasaからUmeåまでバルト海を横断すると、OuluからBergenまでは歩いて2000kmほどなので、70日かかる計算だ。時間だけはたっぷりある学生なら行けないこともない距離だ。
ちなみに、バルト海は、スキー板を履いて渡ることが可能である。問題は、砕氷船が海上を往来することで、砕氷船が通った後は、再び氷が張るまで待たなければならない。ただでさえ海上は寒いのに、氷が張るまで待つなんて、なんの苦行なのだろうか。そして、5月は多分氷が溶けている。バルト海を横断できないとなると、流石に時間がかかりすぎる。故に却下。
↓参考までに
以下、面倒になったので、簡潔に。 - 自転車
流石に雪が残る5月の山越えは怖い。無理。却下。 - ヒッチハイク
可能だけど、初の単独海外旅行でそれはちょっとビビる。やっていた外国人とは喋ったことがあるけど。メンタル弱者の私はあきらめた。 - 自動車
交換留学の規定で禁止されていた。私はルールは一応守ろうとする意識の高い人間である。却下。 - 飛行機
金さえ払えば乗れる。Norwegianは安いし、席もそれなりに広い。もうこれでいいよ。はい。
実際かかった交通費は
飛行機
Oulu-Helsinki 4000円くらい
Helsinki-Bergen往復 2万5000円くらい(Arlandaでトランジット。時差あり。)
バス
Helsinki-Oulu 2500円くらい
ちなみに、
宿泊費が1万7000円(ホステル5泊)くらい。
フィヨルドツアーがRound trip(往復)で2万4000円くらい。
つまり、全部で7万5000円くらいかかった。
お金かかり過ぎて、泣きそうになった。
でも、フィヨルドを見るためだ。私は涙を呑んで、この苦境を耐え忍んだ。
あれ?
話が進まねえな。なんでだ??
続く。